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『灰栗君は太れない』2

灰栗アルトは、未だ体重2桁を維持していた。


灰色熊(グリズリー族)では、中学生でも3桁は珍しくない。



更に言うと、彼は”太りたい”とすら思っていた。


にもかかわらず、その体型は肥満とは縁遠く……



===





その日の帰宅時は、いつもと様子が違っていた。


道路には人の気配が無く、空模様もどこか不気味に感じられた。


嫌な感じだ。さっさと家に帰ろう……。


「もし……そこのお方」

「えっと、自分ですか?」

死角にいたのだろうか、声のする方を向くと、顔が隠れるほど深くフードを被った怪しげな猫の老婆がいた。


道の傍らで、露店……だろうか。 アクセサリや、小物がシートの上に並べられている。

「ヒヒ、よろしければ、おひとついかがかね……
きっと、気に入るものがあると思いますよ」

「え、いやぁ、どうですかね」

不思議な形をしたロウソクや、見た事のない文字で書かれた古本。


何の生物がモデルになったかわからない彫刻などが並べられていて、正直不気味でしかない。

いかにも、怪しげな露店販売。

「お前さん、何やら”悩み”がありそうだねぇ……フフフ」

怪しげな小物に、その佇まい。まるで魔女を連想させるお婆さんだ。


「な、悩みぐらい誰にだってあると思いますよ。無い奴の方が珍しい」


「ごもっとも。だが、その悩みを解決できる道具があるとしたら、どうだね?たとえばこの」


「いえ、けっこうです」


食い気味に、否定してその場から立ち去ろうとする。

お金の持ち合わせはあまり無いし、そもそも怪しすぎる。


「まぁまぁ、そう言わず、この”星屑のコップ”なんかはきっと気に入ると……」

言いながら老婆は、不思議な模様が描かれた透明なガラスを手に持ち見せる。



「いや、本当に必要ないんで」

言い放ち、その場を後にしようとすると……

「そう急がず、話だけでも聞いてごらんなさい。
このガラスには、不思議な力があってねぇ。望むものに……」


駄目だこの婆さん、勝手に話し始める。

そのまま買わされる羽目になったら、たまったもんじゃない。

アルトはそれじゃ、とだけ短く言うと本当にその場から立ち去ろうとする。

「ま、待ちなされ!
見たところ灰色熊なのに痩せていて、内心太りたいな~とか思ってるけどなかなか太れない!そうじゃろう?!」

「いやぁ、ははは……」


引きつった笑いを見せながら、 1歩、また1歩と後退していく。


「ならこっちの小瓶はどうじゃ?!飲めばたちまち食欲が増し、自分では気づかないうちにお代わりを自然と繰り返すようになり――」

うわ、なにこの婆さん、めっちゃがっついてくる……


悩みも当たってるけど、なんか的確に指摘してくるし、怖っ。


でも痩せてる自分の悩みなんか、簡単に予測できそうだし、詐欺の常套手段だよなこういうのって。

やっぱり押し売りじゃん……。逃げよ


*灰栗アルトは にげだした!


灰栗は見た目通り、運動神経も良く足も速かった。


齢60、70を超えてそうなババァなら、都市伝説に聞くようなジェットババアでもない限り追いつけないだろう。


「ほ、本当に買わずに行ってしまった……お客さんの気配を感じ取って、出待ちしていたのじゃが……
まぁ、よい。別の者に売るとするか……
ちょいと、そこのワニさんや。疲れによく聞く栄養ドリンクがあるのじゃが、どうかな?」


「え、俺ですかい?」


その後、仕事帰りのサラリーマンワニは半年もせずスーツを3度も新調させ、はち切れんばかりの太鼓腹を抱える事になるがそれはまた別の話……。







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