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『料理長の記憶』

ククさん可愛いよククさん



青瑠璃肥竜さん宅のジ・エーテルにて登場する宮廷専属料理長・ククさんの妄想です。 実際の設定やらなんやらとは異なりまs

===
~伍〇〇の記憶~



その景色は、とても現実のものとは思えない。


火炎が、雷撃が、氷柱が

まるで、雨のように降り注ぐ。


自然現象では決して起こりえない超常現象。



だが夢の景色でも無ければ創作物の中の出来事でもなかった。紛れもなく現実に起きている事で……そして身をもって体感する悪夢(リアル)。



魔法により生み出されたそれらの猛威は、視界を埋め尽くし、着弾地点は激しく粉塵が巻き起こっていく。



いくら魔法障壁の効果がある盾や鎧を装備しているとはいえ、こんなもの気休め程度でしかない。




魔術兵団の猛攻に対し、こちらはジリジリと前線を上げていくしかない。


見知った顔が次々と敵側の魔法に倒れていく。 それが”自分”でなかったのは偶然でしかない。


構える盾が熱を伝える。掌が焼き付くように熱いが、手放すわけにもいかない。


欠損し、弾け飛ぶ盾や鎧の一部が顔を切り裂いた。 ドクドクと赤い血が垂れていく。


大丈夫、自分はまだ生きている。

痛みをまともに感じられるだけ、マシなのだろう。


足元に転がった焼け焦げた”何か”が敵なのか味方だったものなのか、区別できない。




「進めっ!臆しても、連中の魔法は地の果てまで追ってくる!
背を向けるなっ!!」



部隊長たちによる、理不尽な命令。 その指示を出す者ですら、駒の一つでしかない。


そして、それは相手も同様だ。


距離を詰められた相手側の魔術師が斬り付けられ、倒れ伏す。


終わりの見えない戦闘。 それが戦争。 


個々は数字としてしか認識されず、

兵士たちの性格や、身内、それまでの生き様は意味を失う。


自分が所属している重装歩兵部隊は”壁役”としての役割を持っていた。


当然ながら敵からの攻撃は最も苛烈で、かといって戦績を立てられるわけでもない。


必要不可欠な役割でありながら、戦が終わっても賞賛の声は贈られず、


同僚が土の中で眠ってすらいない墓場の前で、ただ祈るのだ。




===




ああ……今回も、なんとか生き残った。

生き残ってしまった、とも言えるのだろうか。


虚ろな表情で重装歩兵ククは鎧を脱いだ。


逞しい四肢。

大盾を片手でも扱える膂力。

ガッシリとした体つきは、まさに重装兵に相応しいが、性格的に戦闘は不向きだった。


懸賞金のかかった魔獣や怪物と相手するのは、まだ得意なのだが。


悪辣非道とはいえ、



「ようクク、お互い生き残ったな」

「ん……」


同僚が声をかける。違う部隊だが、彼の戦闘区域も激しかったのだろう、あちこち包帯を巻いており、満身創痍だ。

……いや、楽な戦場などありはしないのだろうが。



野営地では、救護班が戦士たちの傷の手当をしたり、 各々が武器の手入れをしていた。

次の戦闘に備えるために。


ククの仕事は、それとは別だった。

支援部隊のメンバーと混じり、キャンプ地に設営した簡素な調理場で料理を作る……。


それが思いのほか好評だった。 


以前、彼の部隊が孤立した際に、現地の素材を利用して作った料理がウマい……という口コミが広がり、

今ではこうして毎回調理場に立っている。


「お前、調理スタッフ専属になりゃいいのに。割とマジで」

なんて冗談交じりに言われる事もあるが……それも、悪くないかもしれない。




その日は猪肉に酒と蜂蜜をわずかに加え、叉焼のように煮込んだものと


挽肉の他に、茸類とハーブ類をスパイスとした入れたカレー。


ほとんどが現地調達だが、塩胡椒や醤油といった調味料があるおかげで、意外と食えるものが出来上がっていく。


戦士たちの酒を利用したのできちんとした料理酒ではないが、贅沢は言えない。


束の間の休息。スプーン一杯に掬い、頬張っていく。

気を利かせて、食後のホットコーヒーも用意しておく。 


デザートにクリームかチェリーの乗ったプティングなりティラミスの一つでもあれば違うのだろうが、そんな贅沢が出来れば苦労はしない。


大部分が食事を始めると、ククも自分用の食器に装い食べ始めた。





昔から料理を作る事は好きだった。 せっかく食べるなら、うまいものを食べたかったし、

素材が持つ味だけでなく、調味料の味付け、焼き加減、鮮度の具合で様々な顔を見せる『料理』の奥深さに惹かれていた。



組み合わせも加味すれば、それこそ料理の可能性は無限大だ。



『食事』の良し悪しは部隊士気の増減にも関わる。

ククが担当した兵たちからの評判はよく、次はうちの部隊の方で作ってくれ、なんて頼まれる事もあった。


「お前に死なれたら困るから後方支援頼む」

「いや…魔法を使わない重戦士が後ろから何をしろと」


なんて弓兵にすら言われる。

初めのうちこそ 互いに冗談めいて言っていたが、その話は指揮系統にも伝わっているようで



徐々にククは前線から後方支援…… 特に食材を集めたり、調理をする事の方が増えていった。








~陸**の兵士~



初めのうちは、前線から一歩引いた位置にいる。という罪悪感もあった。



だが、どこにいようが戦場は戦場なのだ。


真夜中の敵襲もあったし、


補給を断つために強襲される危険は変わらなかった。


何より…… 自分が作った料理が”おいしい”と喜ばれる。


英雄譚の一つも生み出せるはずのない雑多な自分が。


限りなく無価値だった一兵士が、名を覚えられ、”役割”を持つ。


ククの指導で調理スタッフは限られた資源の中で、戦士たちが満足できる品を作り続けた。



戦場で恐ろしいのは、怪我だけじゃない。栄養失調や、ストレスによる精神不調。



彼一人の力ではないが、それでも兵士たちの士気は保たれ、戦は優勢のまま進んでいった。



決して楽な戦いではなかった。見知った顔が、還らぬ者となっていったのを覚えている。


本国の援護部隊が到着してからは、一気に形成が変化し、野営地が襲われる事は一度も無くなった。




先が見えないと思っていた戦だが。終わりの時が近づいてきたという実感が、ようやく湧いてきた。



そして戦が終結した日。



「っくはー。今回はしんどすぎだわ……マジで何回死んだかと思ったわ」

「死んだら”コックさん”(ククのニックネーム)の新作が食えなくなるって思ったら、死ぬ気で生き残ってやったわ」

「あーもー、それより準備の方はまだなのか? これじゃ傷より先に空腹で死んじまう」



全てが終わり、冗談を言えるほどに兵士たちの表情も和らげだ。


「ハハ……。今日はめでたい日だから、秘蔵のワインも開けるって聞いたな」


この日の為に、事前に用意し寝かせていたラム肉の出番だろう。


それに鶏肉と里芋を煮込んで味を染み込ませた一品。トマトの在庫が残っていたのも幸いだ。


今日ばかりは、辛い日々を忘れて勝利の美酒に酔おう。



焚火を囲みながら、大勢の兵たちが武勇伝を語り合いながらワインを飲み、ラム肉を食む。


独特な匂いがあるが、辛口のワインがほど良く舌に馴染ませてくれる。



「ようクク、楽しんでるか」


顔を赤らめた黒竜の知り合いが肩を寄せ、酒臭い息を吹きかけてくる。


「あぁ……こうやって、ゆっくりと食事できる時間が、こんなにありがたいだなんて思わなかった。
味付けはどうだった? ワインが辛めだったから、ソースは少し甘みを持たせたんだが」


「はっはっは、文句なしだ。バカ舌な俺らと違って、お前の肥えた舌の選択は正しいからな」


笑いながらサムズアップする黒竜。相当酔っているらしい。 ……だが、今日ぐらいは頭が痛くなるまで飲んでもいいだろう。


それだけ、めでたい日だ。


「まぁ肥えてるのは舌だけじゃないんだろうけどな。
お前、けっこー太ったよな~~ 支給された鎧、もうきついんじゃないのか?」

言いながら、下っ腹を何度かボヨボヨと揺らしてくる。

……あまり意識してなかったが、薄々気づいてはいた。


最前線から退き、自分が一回り”大きく”なっていた事に。


重い鎧を着て剣や盾を振り回すトレーニングは、エプロンを付けておたまや包丁を動かす行為へ変遷した。


期待される分、しっかりとした代物を出さねばと味見の試行回数も多かった。


戦場というストレスも拍車をかけたのだろう。

消費カロリーの減少。摂取カロリーの増大。ストレス。 ……まぁ、太るのも仕方ないのだろうが。


見下ろして、でっぷりと突き出たお腹を視認してククはため息をついた。


帰国時には本格的に訓練をして、絞っておかないとな。  



もっとも、そんな彼の思いは出端からくじかれることになるのだが……






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secret

COMMENT

ククの貴重な兵士時代…だと?!

相変わらず特に何も設定らしい設定がないのにめっちゃ書いてくれてる!!
クク料理長から見た戦場というのが臨場感あってカッコいいです…!
戦場向きじゃない性格っていうのも個人的に考えてたイメージとバッチリでした!
名もなき同僚がいなくなるのはツラいですがそういうのがまた戦場の理不尽さが出てるんだなって…

それにしても既にこの頃から頭角を現していたのかと思うと…クク料理長縁の下の力持ちですやん…!!((

Re: ククの貴重な兵士時代…だと?!

> 相変わらず特に何も設定らしい設定がないのにめっちゃ書いてくれてる!!
> クク料理長から見た戦場というのが臨場感あって


ククさん可愛いよククさん。

まだぽっちゃりだったでしょうけど、皇后さまの食生活に合わせるためにムクムク肥え太って今に至ったのでしょうね…かわいい(何

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